国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する事務処理要領の制定について(例規)

(制定:平成29年1月26日 相第7号)
和歌山県警察本部長から各所属長あて
この度、国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律(平成28年法律第73号)の施行に伴い、国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する事務の取扱いについて、別記のとおり事務処理要領を定め、平成29年1月26日から実施することとしたので、適切に運用されたい。

別記

第1 趣旨
この要領は、国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する制度(以下「支給制度」という。)について、適正な運用を図るため、その事務手続きについて必要な事項を定めるものとする。
第2 準拠
国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する事務については、次の各号に掲げるものによるほか、この要領に定めるところによるものとする。
1 国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律(平成28年法律第73号。以下「法」という。)
2 国外犯罪被害弔慰金等の支給に関する法律施行規則(平成28年国家公安委員会規則第23号。以下「規則」という。)
第3 用語の意義
この要領において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
1 犯罪行為
法第2条第1項に規定する国外犯罪行為をいう。
2 犯罪被害
法第2条第2項に規定する国外犯罪被害をいう。
3 被害者
法第2条第5項に規定する国外犯罪被害弔慰金等をいう。
4 弔慰金等
法第2条第5項に規定する国外犯罪被害弔慰金等をいう。
5 弔慰金
法第4条第1号に規定する国外犯罪被害弔慰金をいう。
6 見舞金
法第4条第2号に規定する国外犯罪被害障害見舞金をいう。
第4 事務の統括
支給制度の運用に伴う関係事務の取扱いについては、警務部警察相談課長(以下「警察相談課長」という。)が、これを統括する。
第5 弔慰金等の支給を受けることができる者
1 弔慰金について
(1) 遺族の範囲
犯罪被害の原因となった犯罪行為が行われた時において、日本国籍を有する者又は日本国内に住所を有する者でなければならない。
なお、日本国籍は、国籍法(昭和25年法律第147号)第11条第1項又は第2項の規定により、自己の志望によって外国の国籍を取得したとき又は外国の国籍を有する場合であって、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、これを失うこととされている。
また、対象となり得る遺族は、被害者の死亡の時において、被害者と次の親族関係にある者である。
ア 配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)
イ 被害者の子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
これらの遺族に該当するか否かは戸籍の記載によるが、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者については戸籍上明らかでないので、例えば、住民票の写し、被害者の親族、友人、隣人等の申述書等の資料を提出させることにより、社会の一般常識からすれば夫婦としての共同生活を営んでいると認められるような事実関係の存在とその事実を成立させようとする当事者間の合意を確認すること。
また、上記遺族に該当しても、当該遺族が日本国籍を有していないため、戸籍上には記載がない場合には、例えば、外国の政府が発行する証明書や出生証明書の写しによって、夫婦関係、親子関係等を確認すること。
(2) 被害者の収入による生計維持
法第5条第1項第2号の「国外犯罪被害者の収入によって生計を維持していた」には、専ら又は主として被害者の収入によって生計を維持していた場合だけでなく、被害者の収入によって生計の一部を維持していた場合も含まれる。したがって、被害者と遺族が同居し、ともに収入を得ていた場合には、相互に生計依存関係がない場合を除いては、当該遺族は、被害者の収入によって生計を維持していた者に当たることとなる。
なお、被害者の収入には、勤労に基づく収入のほか、金利、家賃、地代等の収入も含まれる。
(3) 第一順位遺族
遺族のうち、第一順位の遺族のみが弔慰金の支給対象となるので、第一順位遺族以外の遺族からの申請に対しては、不支給裁定を行うこととなる。
弔慰金の裁定を受ける前に第一順位遺族(二人以上ある場合は、その全員。以下この号において同じ。)が死亡した場合には、第二順位遺族(二人以上いる場合には、その全員)が第一順位遺族に繰り上がる。
なお、遺族順位の繰り上がりは、第一順位遺族が死亡した場合又は法第5条第4項に該当することとなった場合しか生じず、先順位遺族は、弔慰金の支給を受ける立場を放棄することによって、後順位遺族に支給を受ける立場を譲ることはできない。
2 見舞金について
(1) 犯罪行為により障害が残った者
見舞金の支給裁定の申請をすることができる者については、その障害(法第2条第4項に規定するもの。以下同じ。)が残ったことと犯罪行為に相当因果関係があることが必要である。
(2) 既に障害があった場合
既に、身体の同一部位又は精神について、法の別表に掲げる程度に至らない程度の障害があった場合であっても、犯罪行為によって結果的に同表に掲げる程度の障害が残るに至った場合には、見舞金の支給の対象となる。
第6 申請
1 申請者
弔慰金等の支給を受けようとする者が申請者となる。
また、支給に係る申請は、同一の犯罪被害について二人以上の者が申請する場合であっても、各人が、それぞれ法第9条第1項に規定する都道府県公安委員会に対して個別に行う必要がある。
申請者は、日本国内においては、関係する公安委員会に対し、申請に関し必要な援助を求めることができることとされており、例えば、申請の際の添付書類の具体例の教示等が想定される。
2 事務を処理する所属
申請の受理その他の申請に関する事務の処理は、警察相談課において行うこととし、警察相談課以外に申請の申出が行われた場合の対応は、以下のとおりとする。
(1) 警察署において申請の申出が行われた場合
申請の受理に係る事務は、警察相談課が直接対応し、警察署において申請書等を預かることなどは行わない。
警察署において申請の申出が行われたときは、申請者に対し、警察相談課に赴いて申請を行うべき旨を教示するとともに、警察相談課長に本件概要を通報すること。
(2) 領事官等を経由して行われた場合
申請者の住所を管轄する領事官等を経由して申請が行われた場合、領事官等に提出された申請書等は、外交行嚢により領事官等が属する在外公館等から外務省本省に転送され、その後、国家公安委員会・警察庁を介して、和歌山県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に転送される。この場合、当該申請書等の原本が到達するには時間を要することもあるため、事前に公電により申請書等の写しが在外公館等から外務省本省に送られ、その後、国家公安委員会・警察庁を介して、これが公安委員会に提供される。
3 事務処理手続
(1) 申請を受け付ける際は、申請者に対し、運転免許証、旅券(パスポート)、住民基本台帳カード等の官公庁発行の写真付身分証明書の提示を求めるなどにより、本人確認の徹底を図る。
(2) 申請が代理人によって行われるものであるときは、委任状原本の提出を受け、代理人の氏名を申請書の申請者欄の下部に記名及び押印又は署名させる。
(3)申請書に必要な事項の記載漏れがないか確認する。
(4) 申請書に不備があった場合には、申請者に対して十分な教示を行い、申請書の補正を求め、その経過を報告書で明らかにしておく。
(5) 申請書に記載された事項のうち、明らかな誤字、脱字等の軽微な不備は、警察相談課において職権で補正する。
(6) 申請書の受理に当たっては、申請書の受付の欄に受付年月日及び受付番号を記入する。
なお、申請者の住所を管轄する領事館等を経由して申請がなされた場合は、領事館等に提出された日時を確認し、受付年月日及び受付番号を記入する。
(7) 受付番号に関する事務は、警察相談課において処理する。
(8) 警察相談課は、申請書を受理したときは、その旨を公安委員会に報告する。
4 事務処理上の留意点
申請書に記載された内容から次に掲げる事項に該当すると認められるときにおいても、当該申請を受理し、調査を行い、事実関係を明らかにした上で不支給の裁定を行う。
(1) 申請書の提出された日が法第9条第3項に規定する期間内でないこと。
(2) 申請に係る被害が法第2条第1項に規定する犯罪行為によるものでないこと。
(3) 申請者が弔慰金等の受給資格を有しないこと。
5 添付書類
(1) 弔慰金、見舞金に共通する書類について
ア 規則第7条ただし書及び第8条ただし書に規定する「やむを得ない理由」とは、例えば、外国の機関等による証明を必要とするにもかかわらず、当該国等において該当する証明書を発行する制度がない場合や、制度はあるが行政機能が停止しているなど当該国等の状況に照らし、書類の発行を期待できない場合等をいう。
イ 規則第7条第6号及び第8条第3号の「書類」とは、例えば、犯罪行為が行われた国等の治安機関・捜査機関が作成した捜査報告書等の捜査書類であって、犯罪行為と犯罪被害との因果関係、犯罪行為が行われるに至った経緯、加害者と被害者の関係等を知ることができるものをいう。
ウ 規則第7条第7号及び第8条第4号の「その他の証明書」には、例えば住民票の除票等、申請者の国内最終住所地を知ることができるものが含まれる。
エ 規則第7条第8号及び第8条第5号の「書類」とは、医師の診断書、被害者又は申請者の親族、友人又は隣人の申述書等である。
オ 規則第7条及び第8条に規定する「書類」が外国語で作成されている場合には、その日本語の訳文を含む。
(2) 弔慰金について
ア 規則第7条第4号の「書類」については、第5の1の(1)に示す書類とする。
イ 規則第7条第5号の「書類」としては、先順位遺族の死亡を明らかにすることができる戸籍の謄本又は抄本等が挙げられる。
また、第一順位遺族であることの証明資料として、被害者の死亡当時、死亡した被害者の収入によって生計を維持していた事実を認めることができる書類としては、例えば、住民票の写し、送金証明等が挙げられる。ただし、生計の維持に関する書類は、遺族の順位の判定上必要がある場合にのみ求め、当該申請者から、次のいずれかが提出され、確認できている場合には、これを求めない。
(ア) 被害者の死亡の当時、その者に収入が無かったことを示す資料
(イ) 被害者の死亡の当時、その者に配偶者及び生計維持関係にある遺族が無かったことを示す資料
(3) 見舞金について
規則第8条第1号の「医師又は歯科医師の診断書その他の書類」には、次に掲げる事項が記載されている必要がある。
ア 犯罪行為による負傷又は疾病の症状が固定したこと
イ 負傷又は疾病の症状が固定した日
ウ 負傷又は疾病の症状が固定したときにおける精神の障害の状態又は身体の障害の部位及び状態(これらの障害により常に介護を要する状態にある場合にあってはその状態を含む。)
(4) 添付書類の省略
ア 規則第12条第1項の「申請書の余白にその旨を記載して」は、申請書の備考欄に次の事項を記載することにより行う。
(ア) 同時に申請した同一世帯に属する者の氏名
(イ) 省略した添付書類の名称
イ 規則第12条第2項の「特に必要がないと認めるとき」とは、見舞金に係る裁定の申請を行った申請者が犯罪行為により死亡したため、その遺族が改めて弔慰金に係る裁定の申請(以下「弔慰金の申請」という。)を行う場合における規則第7条第2号により証明すべき事項、弔慰金の申請を行った者が裁定を受ける前に死亡したため、新たに第一順位遺族となった者が改めて弔慰金の申請を行う場合における両者の申請に重複する証明事項等について、当初の申請において添付書類等が不足なく提出され、公安委員会において既に明らかとなっている事項に関して改めて申請者に証明させる必要がない場合をいう。
6 申請期間の特例
法第9条第4項の「やむを得ない理由」に当たり得る場合としては、例えば、申請者が犯罪行為の加害者による監禁等のため被害の発生を知ってから2年間以上身体の自由を不当に拘束されていた場合、申請者が申請期間を通じて意識不明の状態にあり、かつ、代理人による代理申請も望めない状態にあった場合、行方不明として取り扱われていた者が、犯罪被害から7年間を経た後に死体で発見され、その時点で初めて犯罪被害であると判断された場合等が考えられるが、実際の申請期間の特例の適用の判断に当たっては、申請期間の原則を一律に適用することが申請者にとって酷であると考えられる真にやむを得ない特段の事情があったか否かを個別具体的に判断する。
第7 裁定
1 裁定のための調査等
(1) 調査等
ア 事務を処理する所属
法第13条第1項又は第2項の規定による裁定のための調査等は、申請書、その添付書類、法第12条に基づき外務大臣が取得した場合に国家公安委員会を経由して公安委員会に提供される情報等を参考にしつつ、警察相談課長が行う。
イ 調査等の要領
(ア) 法第13条第1項の調査等について
a 法第13条第1項の「その他の関係人」とは、被害者を診察した医師等、申請事案について直接又は間接に関係のある者をいう。
b 申請者その他の関係人に報告をさせる場合は、報告書を提出させ、又は供述書を作成する。
c 法第13条第1項の「文書その他の物件」とは、例えば、申請者と被害者との内縁関係を証明する手紙、日記、写真類等、申請者その他の関係人が所持しているもので、裁定を行うために必要であると認められるものである。
これを提出させるに当たって提出者の要求があるときは、預かり証を交付するなどの措置を行う。
また、裁定が終了し、弔慰金等の支払までの事務手続が完了した場合には、速やかに、提出させた物件を提出者に返還する。
d 申請者その他の関係人に対する出頭命令又は医師の診断を受ける旨の命令は、文書により通知する。
(イ) 法第13条第2項の調査等について
a 別紙「裁定のために必要な調査事項の照会先」を参考にして、照会先を決定すること。
なお、同別紙に記載されている事項以外のものに関する照会を排除するものではない。
b 照会先ごとに国外犯罪被害弔慰金等支給関係事項照会書(別記様式第1号)を作成して発送すること。
ウ 調査等の実施における留意点
(ア) 電話や口頭により補充的な調査等を行う場合であっても、調査年月日及び調査対象者を明らかにしてその内容を記録するなど文書による記録化を行うこと
(イ) 調査等は、裁定を行うために必要な範囲に限られるものであり、調査権の濫用にわたることのないよう留意すること。
また、調査等を行うに当たっては、被害者又はその遺族の心情を十分に理解し、その尊厳を傷つけることのないよう留意すること。
(2) 法第13条第3項の規定による申請の却下に関する事務の処理
ア 申請を却下する場合
法第13条第3項の「正当な理由」とは、例えば申請者の報告が黙秘権又は公務員の守秘義務等に関わること、申請者が病気のため出頭できないこと等、同条第1項の調査に協力することができないやむを得ない理由をいう。
イ 裁定申請却下の手続
警察相談課長は、申請者が法第13条第1項の調査等に協力しないため適正な裁定を行うことができないと認められるときは、次に掲げる事項を明らかにした裁定申請却下案を公安委員会に提出し、裁定申請却下の決裁を受けること。
(ア) 申請者に対して行った調査等の内容及び方法
(イ) 調査等に協力しないことについての正当な理由の不存在
ウ 裁定申請却下に関する事務処理上の留意点
申請者が調査等に協力しない場合は、申請者に対して、申請が却下されるおそれがある旨を教示するなどして、申請者の協力を促すこと。
2 裁定
(1) 裁定に用いる情報
裁定を行うに当たっては、申請書、その添付書類、法第12条に基づき外務大臣が取得した場合に国家公安委員会を経由して公安委員会に提供される情報及び法第13条第1項又は第2項の規定による調査等により得た情報を用いること。
(2) 裁定に用いる情報
警察相談課長は、法第11条第1項に規定する公安委員会の裁定を受けようとするときは、調査等により収集した資料に基づき、申請書、その添付書類及び裁定検討に必要となる書類を作成し、公安委員会に提出するものとする。
(3) 不支給事由等について
ア 規則第1条関係
(ア) 第1号について
「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった場合」とは、婚姻の届出をしていないために法律上は夫婦と認められないが、社会の一般常識からすれば夫婦としての共同生活を営んでいると認められるような事実関係をいうものであり、その事実を成立させようとする当事者間の合意と事実関係の存在とが必要になる。したがって、婚姻の意思もなく単に同棲していた場合等は、これに当たらない。
また、当事者間の合意と事実関係の存在の要件があったとしても、民法(明治29年法律第89号)の近親婚の制限(同法第734条)等に該当するものについては、「事実上婚姻関係と同様の事情にあった」とすることはできない。
(イ) 第2号について
「縁組の届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にあった場合」とは、縁組の届出をしていないが、縁組が成立するために必要な民法上の実質的要件を備え、かつ、両者の間に互助又は扶養の関係が認められる場合をいう。
イ 規則第2条関係
(ア) 「犯罪の発生状況その他の治安の状況に照らして生命又は身体に対する高度な危険が予測される地域」とは、典型的には、生命又は身体に危害を及ぼすテロ行為が多発している地域や、殺人又は凶悪な傷害事件が多発している地域を想定している。
また、発生件数だけで判断されるものではなく、犯罪の質・発生頻度等様々な情報から判断するほか、犯罪が発生している状況がなかったとしても、例えば、テロ組織が勢力を拡大しているなど、今後治安の悪化や犯罪の発生が当然予測し得るような状況があって、通常であれば、自らの身の危険を避けるため当該地域に入ることを躊躇する程度の状況にある地域も含まれ得る。
この要件の判断に当たっては、外務省が発している危険情報の有無も重要な判断材料となるが、これが発せられていたことをもって直ちにこの要件を認定できるものではなく、当該情報の具体的な内容をみて判断する必要があるほか、それらの判断材料を被害者が認知していたかどうかという主観的要件も加味する必要がある。
(イ) 「当該地域に所在するやむを得ない理由があったとき」とは、当該危険が予測される地域であっても、そこに所在することが、社会通念に照らして必要かつ相当である場合、当該危険が予測される地域からの退避が不可能であった場合等不支給とすることが適当でない場合を支給の対象とする趣旨のものである。
a「業務を行う必要があったこと」の「業務」とは、正当な業務を意味する。
民間事業者の従業員が業務のために当該地域に入った場合や、当該業務のために当該地域に所在していたが治安状況の悪化後も業務継続のために引き続きとどまる必要がある場合がこれに当たり得る。
b「生活の本拠を有していたこと」とは、例えば、当該地域の者と結婚し、当該地域において家庭を築いていた場合や、当該地域において職を得て生活の基盤を築いていた場合がこれに当たる。
このほか、危険が予測されない時期に観光目的で当該地域に入ったものの、その後の治安状況の変化により危険性が高まり、危険が予測されるようになった時点以降に当該地域から退避することが不可能である事情があった場合等も、「やむを得ない理由」の有無の判断に際して考慮するべき事情であると考えられる。
他方、興味本位や観光のみを目的として既に危険が予測される地域に入る場合やとどまる場合には、当該地域に所在する必要性があった、又は退避が不可能であったとは言い難く、このような事情によっては、当該地域に所在する「やむを得ない理由」があったとは判断できない。
c「やむを得ない理由」を判断するに当たっては、危険情報の発出状況を含めた犯罪の発生状況その他の治安の状況と、当該地域に所在した事情を総合的に勘案し、社会通念上、弔慰金等を支給することが適当か否かという点から個別具体的に検討する。
ウ 規則第3条関係
(ア) 第1号について
「教唆」又は「ほう助」は、刑法(明治40年法律第45号)第61条の教唆又は第62条のほう助と同義である。
本号は、被害者又は第一順位遺族(第一順位遺族が二人以上あるときは、そのいずれかの者。以下同じ。)の積極的な行為を伴うものである。
(イ) 第2号について
a 「過度の暴行又は脅迫」とは、人に対する有形力の行使又は人に対する害悪の告知で、当該犯罪被害を招来することが社会通念上相当であると認められる程度のものをいう。
b 「重大な侮辱」とは、人の社会的名誉又は名誉感情を害する行為で、当該犯罪被害を招来することが社会通念上相当であると認められる程度のものをいう。
(ウ) 第3号について
a 「関連する」とは、被害者又は第一順位遺族の著しく不正な行為がなければ犯罪行為もなかったという条件関係があることをいう。
b 「著しく不正な行為」とは、規則第3条第1号又は第2号に掲げる行為以外の行為で、違法性の強いものをいう。
エ 規則第4条関係
(ア) 第1号について
a 犯罪行為の「容認」とは、明示又は黙示の同意等犯罪行為を容認する行為をいう。
これは受動的なものであり、教唆又は幇助による犯罪行為の容認は、この号の規定ではなく、規則第3条第1号の規定に該当する。
b 「容認」は、通常の弁識能力を有する被害者又は第一順位遺族が任意かつ真意に行ったものであることを要する。
(イ) 第2号について
「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織に属していたこと」の認定を行うに当たっては、関係所属と十分に協議すること。
(ウ) 第3号について
a 「その他の加害者と密接な関係にある者」とは、被害者又は第一順位遺族の行為が、犯罪行為の加害者に対する報復としてなされたと同一視し得る範囲内にある者をいう。
b 「重大な害」とは、治療に要する期間、後遺障害の有無その他の事情に照らし、社会通念上看過することができない程度の傷害をいう。
オ 規則第5条関係
規則第5条は、被害者と加害者との関係、遺族(第一順位遺族以外の遺族(法第5条第1項の弔慰金の支給を受けることができる遺族をいう。)を含む。)と加害者との関係その他の事情から判断して、弔慰金等を支給することが社会通念上適切でないと認められる場合に適用される。
カ 規則第6条関係
「国外犯罪被害弔慰金等を支給しないことが社会通念上適切でないと認められる特段の事情があるとき」とは、例えば、規則第3条第2号についていえば、被害者又は第一順位遺族の行為が外形的にはこれに該当するが、犯罪被害が発生した過程における加害者の行為等に照らせば、当該被害者又は第一順位遺族に対して当該行為を行わないことを期待し難い事情があるときが挙げられる。
(4) 支給の制限
申請者が、法第7条に基づく給付金を定める国家公安委員会告示(平成28年国家公安員会告示第51号)に定める給付金の支給を受けているときは、その金額の多寡を問わず弔慰金等は支給することができないため、その旨を申請者に説明するとともに、当該給付金の支給の有無について、当該給付金に係る制度を所管する官庁に対して照会を行い、確認すること。
3 裁定等の通知
(1) 申請者への通知
警察相談課長は、公安委員会の裁定結果等に基づき、申請者に対して、規則第10条に基づく国外犯罪被害弔慰金等裁定通知書(規則様式第3号)又は国外犯罪被害弔慰金等支給裁定申請却下通知書(規則様式第4号)により速やかに通知すること。
裁定結果等の通知に当たっては、申請を却下した理由、裁定の内容及び理由を十分に説明し、申請者の理解を得るよう配意すること。
なお、警察相談課長は、弔慰金等を支給する旨の通知をするときは、当該弔慰金等の支給を受けるべき者に対し、併せて規則第10条第2項に基づく国外犯罪被害弔慰金等支払請求書(規則様式第5号)を交付すること。
(2) 申請者が国外に所在している場合
規則第10条第1項の規定による処分の通知時において、申請者が国外に所在している場合にあっても、原則として、国家公安委員会・警察庁、外務省本省、在外公館を経由して、国外犯罪被害弔慰金等支給裁定通知書(規則様式第3号)及び国外犯罪被害弔慰金等支払請求書(規則様式第5号。弔慰金等を支給する場合に限る。)又は国外犯罪被害弔慰金等支給裁定申請却下通知書(規則様式第4号)を申請者に交付すること。
この場合、裁定の内容、理由等について直接説明することが困難であることから、必要に応じて別紙を設け理由等を詳細に記載する等をおこなうこと。
第8 支払請求
1 申請者が国外に所在している場合
日本国外に所在している申請者が規則第11条の規定による弔慰金等の支払の請求を行うときは、法第9条第2項に規定する領事官等を経由して行うことができる。
領事官等を経由して弔慰金等の支払の請求が行われたときは、請求書は領事官等が属する在外公館から外務省本省、国家公安委員会・警察庁に転送される。
公安委員会に対しては、警察庁から当該請求書の写しが送付されるので、警察相談課長はそれを受理し、その旨を公安委員会に報告すること。
2 時効
法第16条の規定により、弔慰金等の支給を受ける権利は、2年間行使しないときは時効により消滅するが、この消滅時効の起算日は、民法の到達主義(民法第97条)及び初日不算入の原則(同法第140条)の規定により、申請者が裁定の通知書を受け取った日の翌日とする。
第9 不正利得
法第15条の「偽りその他不正の手段」とは、詐欺罪その他の犯罪を構成する行為のほか、社会通念上不正行為と認められる行為をいう。
具体的な行為の態様としては、公安委員会に提出する申請書に虚偽の事実を記載したり、公安委員会に偽りの報告をするなどの行為が想定される。その不正の手段は、弔慰金等の支給を受けた者の行為に限られない。
弔慰金等の「支給を受けた者」とは、偽りその他不正の手段により、現実に、かつ、直接にその支給を受けた者をいう。
第10 争訟
1 公安委員会の裁定等についての審査請求
(1) 裁定についての審査請求
法第21条の規定により読み替えて適用される地方自治法(昭和22年法律第67号)第255条の2第1項第1号により、弔慰金等の支給裁定についての行政不服審査法(平成26年法律第68号)による審査請求は、国家公安委員会に対してなされることとなる。
(2) 不作為についての審査請求
裁定の申請があった事案について、相当期間経過してもなお公安委員会による裁定が行われない場合における不作為についての審査請求は、国家公安委員会に対する審査請求及び公安委員会に対する審査請求のいずれもが認められることとなる。
(3) 審査請求の取扱い
ア 国家公安委員会に対する審査請求書が公安委員会に提出された場合には、速やかに警察庁に送付する。
イ 不作為についての審査請求が公安委員会に対してなされたときは、弔慰金等の支給の申請手続に準じて取り扱う。
ウ 公安委員会に対してなされた審査請求事案の処理については、各公安委員会が定めた行政不服審査の処理に関する規定の定めるところにより行う。
エ 公安委員会に対して不作為についての審査請求があったときは、国外犯罪被害弔慰金等関係審査請求事案報告書(別記様式第2号)により速やかに国家公安委員会(警察庁)に報告する。
また、事案の処理を終結したときも同様とする。
2 行政事件訴訟法
(1) 処分の取消しの訴え
公安委員会の行った裁定の取消しを求める訴えがあった場合には、当該裁定を行った公安委員会が置かれている都道府県が被告となり、当該訴訟については、公安委員会が当該都道府県を代表する。
(2) 行政事件訴訟の取扱い
ア 公安委員会の行った裁定の取消しを求める訴えが提起され、裁判所から訴状の送達を受けたときは、本県警察における訟務事案の処理に関する規定の定めるところにより処理すること。
イ 行政事件訴訟に関する報告は、「「警察庁及び管区警察局における訟務体制について」の運用について」(昭和48年6月1日付け警察庁丙人発第54号)第4に定めるところにより行うこと。
第11 支援制度の広報及び教示
1 広報
警察相談課長及び警察署長は、警察施設等の公共の施設への広報用ポスター等の掲示、ホームページ、部内外の広報資料への制度に関する情報の掲載等の広報を継続的に実施することにより、本制度の周知を図り、被害者又はその遺族からの申請を支援すること。
2 教示
本法の犯罪被害に該当し、又は該当する可能性があると認められる事案を把握したときは、弔慰金等の支給対象となり得ることから、広報用リーフレット等を直接交付するなどの方法により、被害者又はその遺族に対して個別に支給制度を教示すること。ただし、被害者又は第一順位遺族(第一順位遺族が二人以上あるときは、そのいずれかの者。)に規則第1条から第4条までの不支給事由があると見込まれる場合や法第7条の給付金が支給されると見込まれる場合であって、弔慰金等が不支給となることが明らかな場合など、教示することが被害者又はその遺族の心情を害することが懸念される場合は、この限りでない。
なお、教示を行ったときは、国外犯罪被害弔慰金等教示実施報告書(別記様式第3号)により、本部長に報告すること。
第12 警察庁への報告等
1 警察庁への報告
(1) 関係資料の写しの送付
公安委員会が裁定をしたとき又は申請を却下したときは、直ちに国外犯罪被害弔慰金等支給裁定通知書又は国外犯罪被害弔慰金等支給裁定申請却下通知書の写しを警察庁に送付すること。
(2) 特異事案等の報告
本制度の運用に関し、紛糾することが予想される事案等が発生した場合には、その都度、関係書類を添えて警察庁に報告すること。
2 取扱事案の管理
警察相談課は、弔慰金等の申請事案について、別添「国外犯罪被害弔慰金等支給裁定申請受付一覧表」を作成し、電子ファイルで管理するなどの方法により、取扱事案の管理を徹底すること。
3 関係書類の保存
支給制度の関係書類の保存期間は、その取扱いが完結した日から5年間とする。

(別紙、別記様式及び別添省略)

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